いまさら聞けないXGのトリセツ5|世界で評価される7人の魅力・その必然性
執筆・編集:常川 啓介
世界で活躍する7人組アーティストグループ「XG(エックスジー)」が、グローバルシーンで特異な存在感を放っている。 HIPHOP/R&Bを軸とした全編英語詞の楽曲、緻密に構成されたパフォーマンス、そしてSNSを起点とした世界規模のバイラル。これらは偶発的なものではなく、極めて高いクリエイティブ基準によって設計された必然の結果と言える。
2026年1月、グループはその名称を「Xtraordinary Girls」から「Xtraordinary Genes」へと再定義した。XGメンバー1人ひとりの内側に宿る “核(CORE)” や創造性、変化を恐れず新しい文化を作り続ける精神性をもとに、より深く、より本質的な進化を目指し、歩みを進めていく。その姿勢は、ボーダーレス化する現代のポップカルチャーを象徴している。
本稿では、XGがいかにして現在のポジションを確立したのか。その魅力を構成する5つの要素を整理し、現在地とともに紐解いていく。
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1. XGとは――国境もジャンルも超越する「X-POP」の概念
XGは2022年3月のデビュー以来、「X-POP」という独自のジャンルを標榜してきた。メンバーは全員日本人だが、楽曲制作はアメリカのシーンを意識したグローバルな体制をとる。エグゼグティブプロデューサー JAKOPS(SIMON)の指揮下、K-POPの育成システムによる技術的な修練と、USのHIPHOP/R&Bマナーに則った音楽性を融合させている点が最大の特徴だ。
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XGが世界市場で受け入れられた背景には、言語とサウンドの壁を取り払った戦略がある。ネイティブレベルの英語詞とフロウを徹底することで、海外リスナーがストレスなく楽曲に没入できる環境を作ったこと。そして、最新のビートにTLCやDestiny's Childなどを彷彿とさせる2000年代R&Bの質感を織り交ぜることで、Z世代には新鮮さを、往年の音楽ファンには信頼感を与えたことだ。既存のJ-POPともK-POPとも異なる文脈で、純粋な「音楽としての強度」を提示したことが、国境を越えた支持につながった最大の要因である。
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2. バイラルを生む楽曲群――視覚と聴覚へのアプローチ
XGの知名度拡大を語るには、SNSでの拡散は切っても切り離せない。しかしそれは単なる一過性の流行ではなく、視覚と聴覚にフックを仕掛けたクリエイティブに起因する。
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その起点は「SHOOTING STAR」にある。独創的なスタイリングと夢幻的なシンセサウンドが融合したこの楽曲は、TikTok等のショート動画プラットフォームで強烈な親和性を発揮した。「音源としての心地よさ」と「映像としての特異性」がリンクし、世界中のユーザーが「このグループは何者か」と検索する動機を作ったのだ。
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一方で、「LEFT RIGHT」は全く異なるアプローチで成功を収めた。ミニマルなトラップビートに乗せた極上のR&Bは、バイラル先行ではなく楽曲のグルーヴそのものが評価され、アメリカの主要ラジオチャート「Mediabase Top 40 Radio Airplay Chart」に13週連続ランクインする快挙を達成した。
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さらに「WOKE UP」では、808ベースが鳴り響くメンバーそれぞれの個性溢れるラップパフォーマンスは、強力なヒップホップアイデンティティを感じさせ、何にも定義することのできないXGの存在感を提示した。HIPHOPヘッズからの評価も獲得し、楽曲ごとにファンベースを確実に拡張しているのも特筆すべきポイントだ。
3. なぜパフォーマンスが強いのか――“分業”を廃した高い基礎能力
XGのステージパフォーマンスが「強い」と評される理由は、ボーカル担当やダンス担当といったメンバー間の役割分担を感じさせない総合力の高さにある。全員が前に出られる高い基礎能力を持ち、曲ごとに見せ方を変えながら「全員主役」を成立させる。
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XGのパフォーマンスは、個々のスキルが均質化されつつも、表現のベクトルが統一されているのが特徴だ。複雑なフォーメーション移動を行いながらも、全員の身体の角度やリズムの取り方が正確にシンクロする基礎体力が備わっている。それに加え、「GRL GVNG」で見せる威圧的なアティチュードや、「NEW DANCE」でのリラックスした表情など、楽曲のコンセプトに合わせて7人が一斉に “役に入る” 憑依的な表現力も持ち合わせている。
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韓国の音楽番組やYouTubeコンテンツ「it's Live」などのバンド演奏で見せる、激しいダンスと安定した生歌の両立は、長期間にわたるトレーニングに裏打ちされたフィジカルの強さを物語っており、ライブパフォーマンスこそがXGの真骨頂であると言える。
4. 7つの“Genes”――個性が共鳴する、新たなアイデンティティの形
7人それぞれの個性が共鳴し合って結びつくチームとしての在り方が、XGの魅力である。
チームを牽引するのはリーダーのJURINだ。低音のラップと、ステージ全体を俯瞰するような冷静な佇まいが、グループのスタイリッシュな軸を作っている。そこにダイナミクスを与えるのがメインボーカルのCHISAである。突き抜けるような高音と安定感に加え、関西出身らしい軽妙なキャラクターも持ち合わせる。HINATAのエアリーで透明感のあるボーカルは、ハードな楽曲の中に洗練された余韻を残し、HARVEYは唯一無二のハイトーンボイスとモデルのような存在感で、異次元のフックを生み出す。
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JURIAは楽曲にエモーションを与える表現力豊かなボーカリストであり、そのパワフルな発声は聴く者の感情を揺さぶる。マルチリンガルであるMAYAは、ボーカル・ラップ・ダンスのすべてにおいて高水準なオールラウンダーとしてチームを支え、チアリーディング出身のエネルギッシュな表現を光らせる。そして最年少のCOCONAは、卓越したリズム感を持つラッパーであり、常に既成概念を更新する表現者だ。2025年末に自身のジェンダー・アイデンティティに関するプロセスを公表した際、その自己受容と率直な表現は、XGが掲げる「個の尊重」というメッセージを体現するものとして、多くの支持と共感を集めた。
5. 拡張するファンダム――ファンとの共創が生み出す、グローバルなうねり
XGの支持拡大は、ファン(ALPHAZ)との相互作用によって加速している。
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MVやパフォーマンス映像には、二次創作やシェアを誘発する “視覚的なフック” が意図的に散りばめられている。ファンによるリアクション動画やダンスカバーがSNSで拡散され、それが新たな層へのタッチポイントとなる循環が形成されているのだ。また、ステージ上の圧倒的なカリスマ性と、SNSやビハインド映像で見せる等身大のキャラクターとのギャップも、エンゲージメントを高める要因となっている。完璧なパフォーマンスと、人間味あふれる素顔の往復が、ファンの熱量を維持・拡大させている。
XGとは――ボーダーレス時代の新たなスタンダード
XGが提示するのは、特定の国やジャンルの枠に収まらない、純粋なクリエイションとしての音楽活動である。「Xtraordinary Genes」へと名称の意味を更新したことは、今後より一層「個」としての表現を深め、自由な在り方を追求していく宣言とも受け取れる。
その活動は、日本の音楽シーンにおける特異点から、世界の音楽シーンにおける新たなスタンダードへと移行しつつある。もしXGにまだ触れていないのであれば、まずはYouTubeで映像を目撃することをお勧めする。そこには、既成概念を鮮やかに覆す7人の才能が待っているはずだ。
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<Release Information>
2026.01.23 Release - 1st Full Album 'THE CORE - 核'
待望の1stフルアルバム『THE CORE - 核』は、XGというアーティストの最も深い本質へ刻み込んだ宣言である。
装飾や一過性のトレンドを脱ぎ捨て、音楽と存在の根源(コア)へと焦点を合わせた本作は、全編を通じ、ジャンルの境界を自在に行き来し、異なる時代や空間を繋ぎ合わせる音楽的旅路を描き出す。その変幻自在なアプローチの中心には、決して揺らぐことのないXGのアイデンティティと、強固なエネルギーが確固として鎮座している。
『THE CORE - 核』は、それ自体がXGが提唱する「X-POP」の宣言だ。「良い音楽は、それ自体で価値を持つ」という信念を旗印に、時間や空間を超越する真の音楽的体験を提示する。
これは、現在のXGを最も純粋に映し出した成果であり、これから無限に広がる可能性へと向かう、力強い出発点となる。
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