King Gnu “THE GREATEST UNKNOWN” @ 東京ドーム|時代を築き、未来を切り拓いていく彼らの圧巻のステージ
Text by 沖さやこ
55,000人と共に音楽を鳴らし続けた、約2時間の熱演だった。King Gnu初の5大ドームツアー “King Gnu Dome Tour「THE GREATEST UNKNOWN」”。超大作とも言える4thアルバム『THE GREATEST UNKNOWN』の楽曲に過去曲を交えて再構築した新たなセットリストを携え、スケールアップした演奏には、4人の音楽家としての矜持が迸っていた。
Photo by Kosuke Ito
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 ツアー6公演目にあたる、東京ドーム2デイズの最終日。開演時間を過ぎると観客は座席から立ち上がり、待ちきれないと言わんばかりに歓声と拍手で舞台裏の4人へと思いを伝える。それに呼び寄せられるようにオープニングムービーが流れると、ステージ上にメンバーが登場。シームレスに1曲目「SPECIALZ」へとなだれ込んだ。

 ステージの両脇には巨大なLEDモニターが、ステージバックには山脈を象るモニターが配備され、曲ごとに異なる映像演出がなされた。「一途」では矢継ぎ早に打たれるレーザーがスリリングなツインボーカルをより際立たせ、「千両役者」ではメンバーを捉えた映像にノイズが走るなど、観客を聴覚だけでなく視覚でも挑発し翻弄する。「STARDOM」では常田大希(Vo/Gt)が「歌おう!」と呼び掛け、イントロから客席の大合唱が起きた。新井和輝(Ba)の落ち着きの中に熱さを感じさせるプレイ、勢喜遊(Dr)の全身全霊を注ぎ込む野性的なリズムワーク、常田の艶やかで激しいギターソロ、井口理(Vo/Key)の憂いと余韻を作り出すボーカルが、次々と打ちあがる火の玉との相乗効果で一層迫力を増す。

 洞窟や火山など、大自然を彷彿とさせる舞台演出に圧倒されていると、アルバムの1曲目に収録されている「MIRROR」に乗せて動物のヌーが歩く様子とツアータイトルが映し出される。ここからさらに未知なるディープな空間へといざなわれていった。
Photo by Kosuke Ito
 セットリストは要所要所でアルバムの曲順どおり、もしくは同じセクションの曲を続けざまに埋め込むなどし、アルバム『THE GREATEST UNKNOWN』のパラレルワールドのようなかたちで披露された。例を挙げると、1曲目と2曲目に披露された「SPECIALZ」と「一途」は、アルバムでは4曲目と5曲目。「MIRROR」の後は、アルバムの曲順どおりセットリストも「CHAMELEON」と「DARE??」が組まれたといった具合だ。
Photo by Kosuke Ito
 だがここで想像の上を行くのがKing Gnuである。このツアーで「DARE??」は過去にライブでも披露されている「Vivid Red」をマッシュアップして届けられた。曲としての境目も、オートチューンが効いた常田と井口のボーカルもじっくりと溶け合い、より濃厚な音の渦へと引き込んでゆく。「白日」では4人の音が呼応する様子や、常田のギターソロから井口のハイトーンボイスへとつながっていく瞬間など、生演奏ならではのグルーヴが心地よく響いた。
Photo by Kosuke Ito
 MCで井口は5大ドームツアーについて「まさかここまで来れると思ってなかった」と感慨に浸る。この公演の模様が映像化する旨に触れると、「僕らは100年後に生きていないかもしれないけど、100年後の見知らぬ人が今日という日の映像を観て、“こんな最高な1日があったんだ”と思うかもしれない。力を貸してくれ!我々は映像の中で生き続けます。伝説を作りましょう!」と呼びかけた。

 井口のMC中にBGMとしてピアノを弾いていた常田は、そのまま独奏を続け「硝子窓」へとつなぐ。息を多く含んだ井口の歌声は一人ひとりの心へ静かに染み入り、たちまち会場を曲の世界の奥深くへと引き込んでいった。さらに「泡」では、光の届かないところにまで観客を沈めていくような、濃密な音像で包み込む。東京ドームという広大な、音楽に特化しているわけではない空間で、ここまで楽曲の内省的な世界観を尊重したライブを成し遂げるのは、相当の力量と集中力が必要であると推測する。「2 Μ Ο Я Ο」では浮遊感からロックへとしなやかに移り変わる様も美しく、そこから間髪入れずにつないだ「Vinyl」では観客からの歓声が湧き立ち、会場はたちまち祝祭感に満ちた。
Photo by Kosuke Ito
 まだまだ4人は我々の予想を超えてくる。常田が主宰する音楽プロジェクト・millennium paradeが椎名林檎を招いて制作した「W●RK」をサンプリングした「W●RKAHOLIC」が流れると、続いてアルバムどおり「):阿修羅:(」に入るかと思いきや、突如ステージにホットパンツにピンヒールを履いた金髪ショートカットヘアーの椎名林檎が現れ、「W●RK」を歌い出した。彼女の登場に客席の熱も4人の演奏の熱もさらに上がり、会場のうねりは増すばかりだ。椎名がサングラスを取り、クールな笑みを浮かべて投げキスをして去ると、モニターには「):阿修羅:(」の文字が映し出されて同曲へ。緊迫感と高揚感がない交ぜになったサウンドスケープとスピード感のある演出がさらなる熱狂を生み出した。
Photo by Kosuke Ito
 インタールードの「δ」を挟み「逆夢」「IKAROS」と、アルバムどおり井口がメインボーカルを務めるスケールの大きな楽曲が並ぶ。あらためて彼のボーカルの力に圧倒されていると、「Slumberland」、「Sorrows」、ドラムソロでつないで「Flash!!!」とメジャー1stフル2ndアルバム『Sympa』収録曲を3曲連続で披露。過去と現在が接続するような展開に、再度観客が全身で喜びを示す。ステージと客席が、互いの放つ音と感情でコミュニケートしていく情景は、非常にすがすがしかった。

 「皆さんが今日どんな気持ちで臨んできたかが伝わった」と語る井口は、ステージが見えにくい座席の観客も慮る。そして「まだまだ楽しんで」と呼び掛け、「BOY」「SUNNY SIDE UP」「雨燦々」と会場をポジティブな空気で巻き込むと、「仝」「三文小説」「ЯOЯЯIM」とアルバム同様の曲目で本編を締めくくる。エンドロールが流れ、最後に大きくタイトルが映し出されると客席からは大きな拍手が。映画のような美しいラストでありながら、映画というにはリアリティに富んだ空間に、自分自身が壮大な物語の大団円に組み込まれた感覚があった。

 観客がアンコールを求めてスマートフォンのライトでステージを照らすと、メンバーがステージに現れる。井口は「(King Gnuは)いいバンドだね」と笑い、「この日の映像が100年先も残ってるかどうかは、俺ら次第じゃんね。ずっとついてきてくれるかね?」と観客に呼び掛けると、客席からは大きな歓声と拍手が沸いた。
Photo by Kosuke Ito
 ラスト2曲は会場全員で歌うことを考えながら作った曲であると明かした常田が「今日すごい歓声もらったんだけど、その10倍くらいの声でみんなで歌ってくれませんか?」と告げる。そこにすかさず井口が「(自分たちの歌も演奏もみんなの声で)かき消して」と付け加えると、常田も「どんどんかき消して。そしたら俺らももっとでかい音でやるし。限界まで歌って、全部のエネルギーを置いて……明日からもお仕事頑張ってください」と笑った。

 そして観客とともに「Teenager Forever」と「飛行艇」を力強く歌い上げた。特に「飛行艇」の威力は途轍もなく、東京ドームの造形も相まってこのまま会場ごと飛び立ってしまうのではないかと思うほどだった。その火種となったのは彼らの演奏と歌、つまり音楽の力である。バンドとしての実力と人間力で、55000人を圧倒し、興奮させ、牽引した東京ドーム公演。彼らが時代を担い、未来を切り開いていくロックバンドであることをまざまざと証明する、圧巻のステージだった。
Photo by Kosuke Ito
公演情報:
【King Gnu Dome Tour「THE GREATEST UNKNOWN」】
1月13日(土) 大阪・京セラドーム大阪
1月14日(日) 大阪・京セラドーム大阪
1月20日(土) 名古屋・バンテリンドーム ナゴヤ
1月21日(日) 名古屋・バンテリンドーム ナゴヤ
1月27日(土) 東京・東京ドーム
1月28日(日) 東京・東京ドーム
2月3日(土) 福岡・福岡 PayPayドーム
2月4日(日) 福岡・福岡 PayPayドーム
3月23日(土) 札幌・札幌ドーム

<セットリスト>
M1. SPECIALZ
M2. 一途
M3. 千両役者
M4. STARDOM
M5. MIRROR
M6. CHAMELEON
M7. DARE??
M8. Vivid Red
M9. 白日
M10. 硝子窓
M11. 泡
M12. 2ΜΟЯΟ
M13. Vinyl
M14. W●RKAHOLIC
M15. W●RK
M16. ):阿修羅:(
M17. δ
M18. 逆夢
M19. IKAROS
M20. Slumberland
M21. Sorrows
M22. Flash!!!
M23. BOY
M24. SUNNY SIDE UP
M25. 雨燦々
M26. 仝
M27. 三文小説
M28. ЯOЯЯIM

ーアンコールー
EN1. Teenager forever
EN2. 飛行艇
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